【この記事の要約】
京セラ創業者・稲盛和夫氏の「人生・仕事の結果 = 考え方 × 熱意 × 能力」という方程式は、我々カイロプラクターにもそのまま当てはまります。治療家にとって、結果を左右する最も重要なプラスの「考え方」とは、患者さんに対する『真摯さ』です。
本記事では、以下の3つのフェーズから、現場に出る前に見つめ直すべき真摯な心構えを紐解きます。
- 治療前(準備):知識と技術の絶え間ない研鑽によって「揺るぎない自信」を構築する。
- 治療中(没入):エゴや結果への執着を捨て、指先の感覚である「いまここ」に全集中する。
- 治療後(勇気):コントロール不可能な結果を手放し、プロセスに全力を尽くした事実を信じる。
いくら解剖学の知識(能力)や練習量(熱意)があっても、心構えが間違っていれば良い治療家にはなれません。愚直に「真摯さ」を貫くことで生まれる深い『信頼』こそが、治療効果を最大化させる最大の鍵となります。
先日、京セラの創業者である稲盛和夫氏の著書『生き方』について触れる機会がありました。その中で、人生や仕事の結果を導き出すための方程式として、非常に興味深い考え方が紹介されています。
『人生・仕事の結果 = 考え方 × 熱意 × 能力』
「能力」や「熱意」がどれだけ高くても、それを掛け合わせる「考え方」がマイナスであれば、結果はすべてマイナスになってしまうという教えです。
これは我々カイロプラクターの心構えとしても、そのまま当てはまる真理です。 どれだけ解剖学に精通し(能力)、どれだけ練習を重ねても(熱意)、患者さんに向き合う「考え方」が間違っていれば、決して良い治療家にはなれません。
では、カイロプラクターにとっての正しい「心構え(考え方)」とは何か? それは、患者さんに対する『真摯さ』に他なりません。
今回は、私が常々学生の皆さんに伝えている「真摯さ」について、改めてこの方程式と絡めてお話しします。
1. 治療前の心構え:自信という名の準備(真摯さ)
真摯さは、患者さんが来院する前から始まっています。 それは、医学的知識を常に最新の状態にアップデートし、カイロプラクティックの治療技術を日々研鑽することです。
稲盛氏の方程式で言えば、「熱意」と「能力」を高める努力を怠らないということ。この準備が整っていなければ、いざ患者さんを目の前にした時、施術者の心に迷いや自信のなさが生まれます。
手技療法は、非言語コミュニケーションの連続です。施術者の自信のなさは、触れている手を通じて瞬時に患者さんに伝わります。それでは信頼関係など築けるはずがありません。 「準備不足=患者さんへの裏切り」であると、肝に銘じてください。

2. 治療中の心構え:雑念を捨て「いまここ」に生きる
次に、実際に施術を行っている最中のカイロプラクターとしての心構えです。ここが最も「考え方」が問われる瞬間です。
多くのカイロプラクター、特に経験の浅い時期に陥りやすいのが、「治してやろう」「すごいと思わせたい」といった結果への執着です。 しかし、結果に意識が飛んでしまった瞬間、それは治療のノイズとなります。
真摯なカイロプラクターは、全神経を「いまここ」の手指の感覚のみに集中させます。 脊椎の動き、筋肉の緊張、組織の質感。それらを感じ取ることに没入し、それ以外の雑念に心を奪われないようにする。
稲盛氏が「愚痴や不満を捨てて仕事に没頭した」ことで道が開けたように、カイロプラクターもまた、自我や欲を捨てて「今のコンタクトポイント」に没頭した時、初めて最高のパフォーマンス(アジャストメント)が発揮されるのです。
3. 治療後の心構え:結果を手放す勇気
最後に、治療後の心構えです。 もしあなたが、治療中に「いまここ」に全集中できていたならば、治療後にすべきことは特にありません。
なぜなら、人体における結果はコントロール不可能だからです。 我々にできるのは、その瞬間にベストな刺激を入力することだけです。 プロセスに全力を尽くしたならば、結果に一喜一憂する必要はありません。
「治らなかったらどうしよう」という不安も、「治してやった」という驕りも不要です。その前段階で、カイロプラクターとしての責務は完結しているからです。

結論:「信頼」は技術の先にある
患者さんへの真摯さとは、これら一連のプロセスを愚直に遂行することです。 この正しい心構えを貫いているカイロプラクターは、結果に左右されることなく、患者さんから深い「信頼」を得ることができます。
そして不思議なことに、「この先生なら信頼できる」という安心感が患者さんに生まれた時、それだけで症状の軽減が起こることが往々にしてあります。 これこそが、プラスの「考え方」がもたらす治療結果の最大化です。
これから現場に出る皆さん。 技術や知識を磨くのは当たり前です。その上で、自分自身の「心構え」=「真摯さ」がプラスの方向に向いているか、常に自問自答してください。
信頼されるカイロプラクターへの道は、そこから始まります。

この記事を書いた人:榊原 直樹
徒手療法大学 学長 / 米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック (DC) / 医学博士 (PhD)
1998年に米国カリフォルニア州でDCライセンスを取得し、ロサンゼルスで10年間臨床に従事。帰国後、岐阜大学医学部にてスポーツ医学の医学博士号を取得。現在は名古屋駅前での臨床の傍ら、徒手療法大学(名古屋・神戸・札幌)の学長として後進の育成に尽力している。
2000年よりヴィパッサナー瞑想を実践し、毎日の瞑想を日課とする。心身両面からのアプローチを探求し続けている。