なぜ私は「カイロプラクティック」ではなく「徒手療法」を校名に選んだのか?
これから治療家を目指す方、あるいは自身のキャリアに迷っている治療家の方から、最も多く受ける質問があります。
「先生、整体とカイロプラクティック、そして徒手療法は何が違うんですか?」
ネットで検索すれば、さまざまな定義が出てくるでしょう。しかし、教科書的な定義だけでは語れない「臨床の現実」があります。 今回は、米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック(DC)であり、医学博士(PhD)でもある私の視点から、この疑問に明確な答えを出したいと思います。
そして、なぜ私が自分の学校に「カイロプラクティック」という名前を付けず、あえて徒手療法大学と名付けたのか。その理由をお話しします。
1. 整体・カイロプラクティック・徒手療法の違い【比較表】
まず、皆さんが最も混同しやすい「カイロプラクティック」と「整体」の違いについて整理しましょう。結論から言えば、この二つは起源が異なる全くの別物です。分かりやすく表にまとめました。
【比較表】3つの療法の違いまとめ
| 特徴 | カイロプラクティック | 整体 | 徒手療法(本学の定義) |
|---|---|---|---|
| 発祥 | 1895年 アメリカ | 日本(古武術など)や中国 | 全世界(理学療法・オステオパシー含む総称) |
| 主なアプローチ | 背骨(脊椎)の調整による神経機能の回復 | 体の歪みを整える、揉みほぐし等 | 筋・骨格・神経・関節への医学的・統括的アプローチ |
| 法的・国際基準 | WHO基準あり(約100カ国で法制化) | 明確な統一基準なし | 医学的エビデンス(根拠)を重視 |
| 教育体系 | 世界的に標準化された教育プログラムあり | 各団体・流派により異なる | 解剖学・生理学・運動学に基づく体系的教育 |
カイロプラクティック(Chiropractic)とは
1895年にアメリカでダニエル・デビッド・パーマーによって創始されたヘルスケアです。 主に背骨(脊椎)の機能障害を調整(アジャストメント)することで、神経の働きを正常化し、健康を回復させることを目的としています。現在、アメリカやイギリス、オーストラリアなど世界約100カ国で法制化されており、WHO(世界保健機関)も認める国際的なヘルスケアです。
整体(Seitai)とは
読んで字のごとく「体を整える」療法の総称です。 日本独自の古武術に由来するものや、中国の推拿(すいな)の流れを汲むもの、あるいはそれらが融合したものなど多岐にわたります。私自身は整体師ではないため詳細な定義については控えますが、カイロプラクティックとは歴史的背景も理論体系も異なるものです。
日本では法整備が曖昧なため、これらが混同されがちですが、学ぶ側としては「全く別の入り口である」と理解しておく必要があります。

2. 米国臨床10年と医学博士取得を経て気づいた限界
私は1998年にアメリカ・カリフォルニア州でドクター・オブ・カイロプラクティック(DC)のライセンスを取得しました。その後、ロサンゼルスにて10年間、臨床の現場に立ち続けました。
本場のカイロプラクティックは素晴らしいものです。しかし、毎日多くの患者さんと向き合う中で、ある「壁」にぶつかりました。 それは、「背骨だけを見ていても、治らない症状がある」という現実です。
帰国後、医学部での研究へ
「もっと深く、人体のメカニズムを知りたい」。そう考えた私は、2007年に日本へ帰国後、すぐに岐阜大学医学系研究科に入学しました。そこでスポーツ医学を専攻し、2015年に医学博士号を取得しました。
カイロプラクティック以前にスポーツ医学に興味を持っていたこともあり、医学的なエビデンスに基づいた研究に没頭しました。 例えば、「パワーリフターにおけるデッドリフトのパフォーマンスと腰椎骨盤の安定性」といったテーマで、筋肉の動きや関節への負荷を科学的に検証しました。そこで得た知見は、私の臨床観を決定的に変えるものでした。
3. なぜ「徒手療法大学」なのか?
私が学長を務める学校の名前に、あえて自分の資格である「カイロプラクティック」を使わず、「徒手療法(Manual Therapy)」と名付けたのには、明確な理由があります。
背骨だけが原因(プライマリ)ではない
カイロプラクティックの基本コンセプトは、「背骨のサブラクセーション(機能障害)による神経圧迫が、体の不調を引き起こす」というものです。この理論自体は間違っていません。
しかし、症状の原因は必ずしも背骨が主犯(プライマリ)とは限らないのです。 患者さんが訴える痛みの原因となる構造は、背骨以外にもたくさんあります。
- 四肢の関節(五十肩、変形性膝関節症、足首の捻挫など)
- 筋肉(筋膜性腰痛、肉離れ後の癒着など)
- 靭帯・腱(テニス肘、腱鞘炎など)
- 末梢神経(手根管症候群、坐骨神経痛など)
私の過去の臨床経験から言えば、これら全てを見ることなく、背骨の調整だけで患者さんの症状を完全に改善させることは不可能です。
統括的なアプローチこそが徒手療法
本学が目指すのは、特定の流派の枠に収まることではありません。 背骨へのアプローチはもちろん重要ですが、それに加えて筋肉、靭帯、腱、さらに神経など、人体の構造すべてに対して統括的なアプローチを行うこと。
これこそが、私が定義する「徒手療法(Manual Therapy)」です。
だからこそ、本学では解剖学や生理学、スポーツ医学を徹底的に学びます。「ボキボキすれば治る」といった安易な技術論ではなく、「なぜそこに痛みが出ているのか?」を医学的な視点で推論し、最適な手技を選択できる臨床家を育てたいのです。

4. よくある質問(FAQ)
ここからは、入学を検討されている方からよくいただく質問にお答えします。
Q. 徒手療法大学で学ぶと、どのような資格が得られますか?
A. 本学のカリキュラムを修了すると、徒手療法大学認定のディプロマ(修了証)が授与されます。日本の法制度上、カイロプラクティックや整体は民間資格となります。本学では医学的知識と技術を習得した証として発行しています。
Q. 初心者でもついていけますか?
A. はい、大丈夫です。解剖学の基礎から、筋肉一つひとつの触診、関節の動かし方まで、少人数制で手取り足取り指導します。現役の理学療法士や柔道整復師の方もスキルアップのために通われていますが、全くの異業種からスタートする方も多くいらっしゃいます。
Q. 卒業後の進路は?
A. 独立開業される方、治療院に就職される方、スポーツトレーナーとして活躍される方など様々です。「治せる技術」があれば、活躍の場は広がり続けています。
5. これから学ぶあなたへ
AIが発達し、多くの仕事が自動化される現代においても、「人の手」による治療は決してなくなりません。しかし、単なるリラクゼーションや、根拠のない手技は淘汰されていくでしょう。
生き残るのは、「確かな診断力(評価力)」と「多様なアプローチ」を持った臨床家だけです。
もしあなたが、 「将来、本当に患者さんを治せる治療家になりたい」 「資格を取るだけでなく、一生使える医学的知識を身につけたい」 そう考えているなら、名前の違いに惑わされず、カリキュラムの中身を見てください。
私たちは、カイロプラクティックの哲学を尊重しつつ、医学的な視野を持った「新しい時代の徒手療法家」を育成しています。 名古屋、神戸、札幌の各校で、本気で学びたいあなたを待っています。
【徒手療法大学 公式メディア・SNS】 最新情報や授業の様子、技術動画などを発信しています。ぜひフォローしてください。
- 公式サイト: https://manualtherapy.jp/
- Instagram: @manual_therapy_school
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[執筆者プロフィール] 榊原 直樹(さかきばら なおき) 徒手療法大学 学長 / 医学博士(PhD) / 米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック(DC) 1998年に米国でDC取得後、LAにて10年間臨床に従事。帰国後、岐阜大学大学院医学系研究科にてスポーツ医学を専攻し、デッドリフトの動作解析等の研究で2015年に医学博士号を取得。現在は臨床家として現場に立ちながら、後進の育成に力を注ぐ。