脊柱管狭窄症の原因が「股関節」に? 診断の落とし穴と、上部頸椎アジャスメントの真髄

【要約】

「脊柱管狭窄症の真の原因は股関節?」——画像診断の盲点を突く驚きの症例報告から、一歩間違えれば事故に繋がる上部頸椎アジャスメントの徹底指導まで。昨日、名古屋校で開催されたテクニック勉強会は、冬の寒さを忘れるほどの熱気に包まれました。私自身が実験台となって伝えた微細な「指先の感覚」と、臨床家が追求すべき「知識と技術の融合」について、当日の様子を熱くレポートします。

徒手療法大学 学長の榊原です。

昨日、名古屋校にてテクニック勉強会が開催されました。窓の外は冬の寒さが厳しさを増していますが、教室の中はそれを忘れさせるほどの、学生たちの学びへの熱気で充満していました。今日はその熱い一日の様子と、そこで共有された臨床の「真髄」について、少し深掘りしてお伝えしたいと思います。

脊柱管狭窄症と診断された症状、その真の原因は「股関節」にあった

勉強会の冒頭は、大阪から新幹線で通学されている下村先生による症例報告から始まりました。遠方からの通学というだけでもその熱意には頭が下がりますが、報告された内容もまた、私たち徒手療法家にとって非常に示唆に富むものでした。

テーマは、整形外科で脊柱管狭窄症と診断された患者さんのケースです。 一般的に、脊柱管狭窄症と聞けば、腰椎そのものの変性や神経の圧迫をイメージし、腰へのアプローチに終始してしまいがちです。しかし、下村先生の慧眼は違いました。彼は、患者さんの訴える症状と身体の動きを丁寧に観察し、ある仮説にたどり着いたのです。

「この症状の原因は腰ではなく、股関節にあるのではないか?」

報告の詳細なメカニズムは割愛しますが、結論から言えば、この患者さんの股関節の運動障害(可動域制限や機能不全)を改善させたところ、脊柱管狭窄症と思われていた症状——間欠性跛行や下肢のしびれ、腰痛など——が全て寛解したのです。

まさに「目から鱗が落ちる」瞬間でした。 整形外科での画像診断は、確かに「骨の変形」や「狭窄」という事実を映し出します。しかし、それが「痛みの原因」であるとは限らないのです。このケースでは、股関節が動かない分を腰椎が過剰に代償して動かざるを得なくなり、結果として腰部にストレスがかかり症状を出していたと考えられます。

もし、画像診断という「木」だけを見て、身体全体の連動性という「森」を見なければ、この患者さんの症状は決して改善されなかったでしょう。私たち徒手療法家が見るべきは、静止画の画像ではなく、動いている人間の「機能」です。今回の症例報告は、改めてその原点に立ち返らせてくれる素晴らしい内容でした。

諸刃の剣、上部頸椎へのアプローチ

症例報告での学びを共有した後、実技練習へと移りました。本日のもう一つのテーマは「頸椎」、その中でも特に繊細な技術を要する「上部頸椎のアジャスメントテクニック」です。

上部頸椎(C1、C2)のサブラクセーション(機能障害)は、重度の頭痛や自律神経症状の原因となり得ます。臨床において、ここぞという時に決めるアジャスメント(スラスト)は、劇的な改善をもたらすことがあります。スラストが必要ないケースも多々ありますが、一方で「スラストを入れなければ治らない壁」が存在するのも事実です。

しかし、この領域は同時に「聖域」でもあります。 脳幹に近く、生命維持に関わる重要な神経核が集中しており、何より脳へと血液を送る椎骨動脈が複雑に走行しています。もし、鑑別を見誤ったり、不適切なベクトルで力を加えたりすれば、椎骨動脈解離などの重大な事故につながりかねません。事実、カイロプラクティックや徒手療法における事故の報告例の大半は、この上部頸椎へのアプローチによるものです。

だからこそ、私はまず徹底的な解剖学の講義から始めました。 なぜそこが危険なのか。椎骨動脈がどの位置を通り、どの角度で頭蓋内に入るのか。どのようなテストを行えばリスクを回避できるのか。解剖学的な裏付けのないテクニックは、ただの「無謀な行為」に過ぎません。

「恐れを知りなさい。しかし、恐れて手が止まってはいけません」

そう伝え、スラストに至るまでのセットアップ、コンタクトポイントの密着、組織のあそびを取る手順など、一つひとつのステップを分解して練習していきました。学生たちの表情も、先ほどまでの和やかさから一変、真剣そのものの引き締まったものになりました。命を預かる責任感が、指先の一つひとつに宿っていくのを感じました。

徒手療法大学名古屋校の勉強会にて、榊原直樹学長が骨格模型の腰と骨盤を指差し、脊柱管狭窄症と股関節の関係について熱心に解剖学指導をしている様子。

捨て身の熱血指導、その意図とは

そして今回は、新たな試みとして私自身が「患者役」となり、学生たちのテクニックを実際に受けて回るという指導を行いました。

普段は模型や学生同士での練習が主ですが、やはり指導者が直接その手を受けることに勝るフィードバックはありません。 「コンタクトが数ミリずれている」 「皮膚のあそびが取れていない」 「スラストのベクトルが深すぎる」

これらは、外から見ているだけでは伝わりにくい感覚です。私の首を差し出し(笑)、実際に彼らの手技を受けることで、その微細な感覚を言語化し、その場で修正させることができました。

まさに「捨て身の熱血指導」です。私自身の首がどうなるかという一抹の不安もありましたが、学生たちの「上手くなりたい」という純粋な熱意に触れ、そんな不安も吹き飛びました。結果として、一人ひとりの技術精度が飛躍的に向上するのを肌で感じることができ、指導者としてこれ以上の喜びはありません。

徒手療法大学名古屋校の勉強会にて、榊原直樹学長が骨格模型の腰と骨盤を指差し、脊柱管狭窄症と股関節の関係について熱心に解剖学指導をしている様子。

終わりに

今日の勉強会を通じて感じたのは、知識と技術の両輪が噛み合った時の強さです。 下村先生の症例報告に見る「正しい鑑別能力(知識)」と、その後の実技練習で磨いた「安全で確実なアジャスメント(技術)」。この二つが揃って初めて、私たちは患者さんの人生を好転させるお手伝いができます。

徒手療法大学では、単に「骨を鳴らす方法」を教えるのではなく、なぜその治療が必要なのか、どうすれば安全に行えるのかという「医学的背景を持った真の治療家」を育成することに注力しています。

今日の学生たちの眼差しを見ていると、この業界の未来は明るいと確信できます。 彼らが将来、多くの患者さんを救い、笑顔にしていく姿が目に浮かぶようです。

私も彼らに負けないよう、臨床、そして教育に全力を尽くしていきたいと思います。 参加された皆さん、本当にお疲れ様でした。そして、素晴らしい学びの時間をありがとうございました。



この記事の執筆者

徒手療法大学の学長、榊原直樹

榊原 直樹(Naoki Sakakibara) 徒手療法大学 学長 / 米国政府公認ドクター・オブ・カイロプラクティック (D.C.) / 医学博士 (Ph.D.)

東北大学卒業後、渡米。1998年に米国カリフォルニア州にてD.C.ライセンスを取得し、ロサンゼルスにて10年間臨床に従事。2007年に帰国後、岐阜大学医学部大学院にてスポーツ医学を専攻し医学博士号を取得。 現在は名古屋駅前で自身の治療院を運営しながら、名古屋・神戸・札幌に拠点を置く「徒手療法大学」の学長として、世界基準の知識と技術を持つ後進の育成に情熱を注いでいる。毎朝の筋トレと瞑想が日課。


▼徒手療法大学の最新情報をチェック

徒手療法大学では、臨床に役立つテクニック動画やセミナー情報をSNSで発信しています。ぜひフォローして、日々の学習にお役立てください。

名古屋・神戸・札幌のカイロプラクティックスクール|徒手療法大学ではカイロプラクティックを学びたいという将来のカイロプラクターを募集中です。

徒手療法大学名古屋校の勉強会にて、榊原直樹学長が骨格模型の腰と骨盤を指差し、脊柱管狭窄症と股関節の関係について熱心に解剖学指導をしている様子。
最新情報をチェックしよう!