📋 この記事のポイント
- 3期生・井上君が腰椎椎間板ヘルニア(50代男性)のケースプレゼンテーションを発表。セントラリゼーションを指標に10回で無痛を達成した治療経過を報告。
- 仙腸関節と頸椎の関節包テクニックを実践練習。指先の下の解剖構造を3Dでイメージしながら施術することの重要性を共有。
- カイロプラクターとして結果を出すには、デモの模倣だけでは不十分。繊細な指先の感覚への集中と持続、そしてイメージトレーニングが技術習得の鍵となる。
本日、徒手療法大学名古屋校にてテクニック勉強会を開催しました。仙腸関節と頸椎の関節包テクニックを中心に実践練習を行い、カイロプラクターとして臨床で結果を出すために何が必要かを参加者と共に深く考えた一日となりました。
腰椎椎間板ヘルニアの症例発表——ケースプレゼンテーションが臨床思考を鍛える
勉強会の前半は、3期生の井上君によるケーススタディの発表でした。症例は50代男性の調理師。右腰部痛(L4〜S1付近)と右足背の痺れ(母趾・示趾間)を主訴とし、調理中の持続的な前屈姿勢が誘因と考えられる腰椎椎間板ヘルニアのケースです。
徒手検査では前屈45度・右ケンプテスト陽性、右SLR45度で腰部痛と足背痺れ、ブラガードテスト陽性、さらに右長母趾伸筋の背屈力低下と、L5神経根障害を示す所見が丁寧に整理されていました。デジュリーヌ徴候(咳で腰部に響く)の記録も見逃せないポイントです。
治療は胸腰椎マニピュレーション、坐骨神経・総腓骨神経リリース、ハムストリングスと大腰筋の筋膜リリースを組み合わせ、並行してマッケンジー体操(1日80〜100回)や調理台の高さ調整(身長÷2+5cm ≒ 98.5cm)といった環境改善まで指導した点が秀逸でした。
治療経過では6回目以降にセントラリゼーション(末梢の痺れが腰部中心へ集約される現象)が確認され、10回目には1万歩歩いても無痛という良好な転帰をたどっています。ペリフェラリゼーションが起きていないかを毎回確認した臨床判断は、椎間板ヘルニア治療の本質を理解したものでした。
ケースプレゼンテーションは単なる「報告」ではありません。症例を言語化して仲間に伝えることで思考が整理され、聴衆からの問いによってさらに深まる。その往復こそがカイロプラクターとしての臨床思考を鍛えます。
関節包テクニックの核心——3Dイメージと指先の感覚
後半は仙腸関節と頸椎の関節包テクニックについて、参加者全員でペアを組みながら実践練習を行いました。カイロプラクターにとって関節包テクニックの習得は、触診精度を飛躍的に高める核心的なスキルです。
私がデモンストレーションの際に繰り返し伝えたのは、「接触している指先の下にある解剖学的な構造を、3Dで想像しながら関節包テクニックを行うこと」です。
仙腸関節の離解操作では、関節包の線維一本一本が少しずつ伸張されていく感覚を指先で感じ取りながら行うことが肝心です。頸椎の関節包テクニックでは、椎間関節の関節面の角度、関節包の厚み、その内側にある滑膜ひだを立体的に意識する。指が触れているのは皮膚の一点でも、意識はその奥の3次元的な構造全体に向いていなければなりません。
私のデモをそのまま真似ることは誰にでもできます。しかしそれは「形の再現」に過ぎない。カイロプラクターとして患者に結果を出す関節包テクニックを行うためには、それだけでは足りません。
重要なのは、繊細な指先の感覚にいかに意識を集中し、持続できるかです。組織の硬さ、温度、微細な抵抗の変化——こうした情報は、意識を向けた者にしか届きません。関節包テクニックの習得とは、手の動きを覚えることではなく、感覚への注意力を鍛えることだと私は考えています。
イメージトレーニングはその入り口です。施術していないときでも、解剖構造を頭の中で3D的に動かし、どこに指を置き、どの方向にベクトルを向けるかを繰り返しシミュレートする。この積み重ねが、カイロプラクターとしての感覚精度を高めていきます。
学び続けるカイロプラクターを育てる
徒手療法大学が目指すのは、卒業後も学び続けることを当然とする文化の醸成です。関節包テクニックをはじめとする徒手技術は、繰り返しの実践練習と深い解剖学的理解の積み重ねによってのみ磨かれます。
本日の勉強会に参加した学生・卒業生たちが、いつか自分の患者の前で「あの練習があったから」と思う瞬間が来ることを確信しています。次回の勉強会も楽しみにしています。


この記事を書いた人:榊原 直樹
徒手療法大学 学長 / 米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック (DC) / 医学博士 (PhD)
1998年に米国カリフォルニア州でDCライセンスを取得し、ロサンゼルスで10年間臨床に従事。帰国後、岐阜大学医学部にてスポーツ医学の医学博士号を取得。現在は名古屋駅前での臨床の傍ら、徒手療法大学(名古屋・神戸・札幌)の学長として後進の育成に尽力している。 2000年よりヴィパッサナー瞑想を実践し、毎日の瞑想を日課とする。心身両面からのアプローチを探求し続けている。