📌 海外実習のまとめはこちら(ミャンマー施術ボランティア・タイ解剖実習)
縁は5月の名古屋から始まった
Dr. Sittichaiとの縁は、遡れば今年5月に始まります。この大学の医学部生14名が名古屋で医療研修を行いました。その時、学生たちを引率していたのが彼でした。
この研修は、タイの大学からの依頼を受けて徒手療法大学が企画したものです。私たちは最大限のおもてなしで彼らを迎えました。クリニック見学、病院視察、そして高山や白川郷への観光。研修の全日程を通じて、食事もすべてこちらが負担しました。
今回のメコン川リゾートへの招待は、そのお礼だとDr. Sittichaiは言います。しかし解剖実習の5日間を通じて、夕食のたびに全員分の会計を何も言わずに支払い続けてくれた彼の姿を見ていると、それ以上の何かを感じずにはいられませんでした。
エメラルド・トライアングルへ
車窓から流れるイサーンの風景を眺めながら、約2時間。到着したのは、タイ・ラオス・カンボジアの3カ国が接する「エメラルド・トライアングル」と呼ばれるエリアです。ムーン川がメコン川に合流するコーンチアム。この地にしか存在しない、特別な風景がありました。
まず向かったのは、パー・テム国立公園(Pha Taem National Park)です。メコン川沿いの断崖絶壁に広がるこの公園には、約3,000年前の先史時代に描かれた岩絵(壁画)が残っています。魚、亀、象、人間——太古の人々がこの崖に刻んだ姿が、今もメコンを見下ろすように存在していました。何千年も前の人間の息吹を感じながら、しばらく言葉を失って立ち尽くしていました。
公園内ではサンチャン滝(Saeng Chan Waterfall)にも立ち寄りました。イサーンの大地に流れ落ちる清流。解剖実習で張り詰めていた5日間の疲れが、少しずつほどけていくような感覚がありました。

過去一番の夕食と、メコンを望む部屋
宿泊したのは、Tohsang Heritage Khongjiam(トーサン・ヘリテージ・コンチアム)。タイ・クメール・バリのデザインを融合させた、メコン川沿いの高級リゾートホテルです。
部屋に入った瞬間、バルコニーの向こうに雄大なメコン川が広がっていました。川幅は広く、対岸はラオスです。部屋は洗練されており、バルコニーには座り心地の良いソファが置かれていました。東向きの部屋のため、晴れていれば日の出が望めるとのこと。
夕食は、タイに滞在した日々の中で過去最高と断言できる料理が並びました。食材の鮮度、味の深さ、盛り付けの美しさ——どれをとっても一流でした。Dr. Sittichaiの「おもてなし」は、最後の最後まで徹底していました。
4時半に目を覚まして
翌朝、目が覚めたのは4時半でした。
バルコニーのソファに腰を下ろし、暗闇の中でメコンの流れる音を聞きながら、夜明けを待ちました。東の空がゆっくりと明るくなっていく。その先に日の出が現れれば、メコン川を背景にした絶景が広がるはずでした。
しかしこの日は、あいにくの曇り空でした。
太陽は雲の向こうに隠れたまま、ついに姿を見せませんでした。
それでも、雄大なメコンの流れをバルコニーから眺めながら、静かにこの旅を振り返る時間は、何ものにも代えがたいものでした。メコン川が流れる音、鳥の鳴き声、風の心地よい感触、今この瞬間に感じることができる感覚を全身で受け止める。日本では到底経験できない、とても贅沢な時間を味わうことができました。
心に決めたことがあります。いつかまた、この場所に来ようと。晴れた朝に、メコン川から昇る太陽を、このバルコニーから見届けるために。

旅の終わりに
タイでの8日間。解剖実習、国際交流、文化の違い、そして人と人のつながり。
Dr. Sittichaiが最後にこう言いました。「あなたは家族だ」と。
この言葉が、すべてを表していると思います。学術的な連携や論文の共著だけが国際交流ではない。食事を共にして、笑って、互いの文化を認め合い、支え合う——その積み重ねが、本物のパートナーシップを生みます。
来年再び解剖実習でこの大学を訪れる予定です。その時には、メコンの夜明けも、きっと見られるはずです。


この記事を書いた人:榊原 直樹
徒手療法大学 学長 / 米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック (DC) / 医学博士 (PhD)
1998年に米国カリフォルニア州でDCライセンスを取得し、ロサンゼルスで10年間臨床に従事。帰国後、岐阜大学医学部にてスポーツ医学の医学博士号を取得。現在は名古屋駅前での臨床の傍ら、徒手療法大学(名古屋・神戸・札幌)の学長として後進の育成に尽力している。 2000年よりヴィパッサナー瞑想を実践し、毎日の瞑想を日課とする。心身両面からのアプローチを探求し続けている。