この記事の概要
「経験年数は増えたが、実力が伴っているか不安」「毎日の施術がルーティン化している」 そんな悩みを持つ治療家や学生へ。本記事では、医学博士・カイロプラクターとしての30年の経験に基づき、治療技術の向上に不可欠な「複利の思考法」を解説します。 漫然とした「作業」と、成長を生む「真剣勝負」の違いとは何か? 時間を味方につけ、10年後に圧倒的な実力を手に入れるための法則をお伝えします。
誰もが最初は未熟である
「時間を味方につける」。 これは資産形成において最も重要なルールですが、私たち治療家の治療技術の向上においても、全く同じ法則が当てはまります。
今でこそ、私は医学博士号を持ち、難治性の症状にも対応できる臨床経験を持っていますが、最初からそうだったわけではありません。 正直に告白しましょう。アメリカのカイロプラクティック大学を卒業したばかりの頃の私の技術レベルは、今では考えられないくらい低いものでした。
今振り返ると、冷や汗が出る思いです。あんな未熟な技術であったにも関わらず、私の治療を受けに来てくれた当時の患者さんたちには、本当に感謝の念でいっぱいです。 今の私があるのは、あの頃、私の精一杯の施術を受け入れてくれた患者さんがいたからです。彼らのおかげで、私は臨床という現場に立ち続けることができました。この感謝は、一生忘れることはありません。
作業を繰り返しても、治療技術は向上しない
さて、ここからが本題です。 当時の未熟だった私が、なぜ30年近くを経て、今は胸を張って患者さんと向き合えるようになったのか。
それは、臨床経験という資産に複利がかかり続けたからです。
投資の世界では、元本に利息がつき、その利息にさらに利息がつくことで、雪だるま式に資産が増えていきます。治療技術も同じです。一つ一つの治療経験が積み重なり、それが知識となり、次の治療の精度を高める。このサイクルが技術の複利効果です。
しかし、ここで多くの治療家が陥る罠があります。 ただ長く続けていれば、勝手に複利が働くわけではないのです。
「毎日漫然とルーティンをこなすような治療」 これは治療ではありません。単なる作業です。 思考を停止し、マニュアル通りの手順を繰り返すだけの時間は、厳しい言い方をすれば時間の切り売りに過ぎません。
残念ながら、作業の繰り返しには複利効果は一切働きません。 毎日同じ作業を何年、何十年と繰り返しても、治療技術が向上することはないでしょう。10年後のあなたは、今日のあなたと同じレベルのまま、ただ歳をとっているだけかもしれません。

技術向上の鍵となる、一回一回の真剣勝負
複利のスイッチを入れる唯一の方法。 それは、一回一回の臨床を常に真剣勝負にすることです。
どんなに経験が浅くても、知識が足りなくても関係ありません。その時点での自分のベストを完全に出し切る。 「なぜ痛むのか?」「もっと良いアプローチはないか?」と脳に汗をかき、目の前の患者さんに全神経を集中させる。
この真剣勝負の数だけが、本当の経験値として積み上がります。
未熟な頃の私も、技術は拙かったかもしれません。しかし、目の前の患者さんを治したいという思いと、その時の全力投球だけは欠かしませんでした。その真剣勝負の積み重ねがあったからこそ、昨日の経験が今日の糧となり、幾何級数的な技術の向上(複利)を生んだのだと確信しています。

10年後の凌駕できないレベルへ
これから治療家を目指す学生の皆さん、そして現役の先生方。
今日、あなたが担当するその患者さんとの時間は、作業ですか? それとも未来への投資ですか?
もしあなたが、一回一回の治療を真剣勝負として積み上げ続けるなら、恐れることはありません。 複利の力は、最初は微々たる差にしか見えませんが、時間が経てば経つほど爆発的な差となって現れます。
真剣勝負を積み上げてきたカイロプラクターは、10年後には、単に作業をこなしてきた者たちがもはや絶対に追いつけない、凌駕できないレベルに到達しています。
時間を味方につけましょう。 そのために、今日の一回を、全力でやり切ってください。
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この記事を書いた人

榊原 直樹(さかきばら なおき)
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徒手療法大学(College of Manual Therapy)学長
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米国政府公認ドクター・オブ・カイロプラクティック(D.C.)
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医学博士(スポーツ医学 / 岐阜大学医学部大学院)
東北大学卒業。1998年に米国でカイロプラクティック医師免許を取得し、ロサンゼルスにて10年間の臨床経験を積む。2007年に帰国後、岐阜大学医学部にて医学博士号を取得。 現在は名古屋駅前にて治療院を開院する傍ら、徒手療法大学の学長として名古屋・神戸・札幌にて後進の育成に尽力している。「知行合一」をモットーに、科学的根拠(EBM)と臨床技術の融合を追求し続けている。