テニス肘が治らない原因とは?医学博士が教える「神経マニュピレーション」

1. 一般的な治療で「治らないテニス肘」の正体

「肘の外側が痛い」。いわゆるテニス肘(外側上顆炎)は、臨床で非常によく遭遇する症状です。

教科書的な医学知識では、これは「手首を屈曲させる筋肉(尺側手根屈筋腱や円回内筋腱)の腱症」、つまり腱の変性であるとされています。 患部の周辺には組織の線維化や癒着が起きているため、一般的な徒手療法では、これらの癒着を剥がす(リリースする)アプローチを行います。

しかし、私が最近診たケースでは、この一般的なアプローチでは全く症状の改善が認められませんでした。 なぜ治らないのか? 常識にとらわれた治療家なら、ここで「治らない、おかしいな」と行き詰まってしまいます。

隠された原因は「橈骨神経」だった

私は視点を変え、多角的な検査を行いました。 その結果、判明した原因は腱や筋肉ではなく、橈骨神経(とうこつしんけい)の絞扼障害だったのです。

筋肉や腱の問題と言われている疾患でも、実は「神経」が絞めつけられていることが原因であるケースは多々あります。 神経への適切なリリースを行った結果、その患者さんの「治らない」と思っていた痛みは劇的に改善しました。

これこそが、AIやマニュアル通りの施術では到達できない、多角的な視点と臨床推論の力です。

「テニス肘が治らない」と悩む方へ。医学博士・米国DCの学長が、一般的な腱症(筋肉の問題)ではなく「橈骨神経の絞扼」に着目した症例を解説。AI時代に治療家が生き残るための「神経マニュピレーション」とは。

2. 医学博士の研究で分かった「常識の外側」を見る重要性

常識や思い込みにとらわれていると、真実(治るポイント)を見落とします。 これは私が岐阜大学医学部でスポーツ医学の研究をしていた頃、ある論文執筆を通じて痛感したことでもあります。

【引用論文】 Influence of lumbopelvic stability on deadlift performance in competitive powerlifters. (SportLogia, 2014)

この研究では、エリートパワーリフターの「体幹の安定性(コアスタビリティ)」が、デッドリフトの挙上重量にどう影響するかを検証しました。 被験者は全員、筋トレを一生懸命やっている選手たちです。しかし、驚くべき事実が分かりました。

「国際大会で活躍するエリートほど、体幹の安定性が優れていた」 「しかし、コアトレーニングをルーティンで行っている選手は一人もいなかった」

つまり、地方大会レベルで伸び悩んでいる選手も、筋トレだけでなく「コア(体幹)」という隠れた要素を強化することで、さらなる記録更新が見込めるという事実が浮かび上がったのです。

治療もこれと同じです。 みんなが筋肉ばかり見ている時に、見落とされている神経や構造的安定性に目を向けることができるか。 それが、アマチュアとプロフェッショナルの分かれ道になります。

3. 「神経マニュピレーション」に必要な2つの絶対条件

では、神経へのアプローチ(神経マニュピレーション)は、見よう見まねでできるものでしょうか? 答えはNOです。ただ触ればいいというものではありません。 スタート地点に立つためには、以下の2つを完全に理解している必要があります。

① ターゲットとなる神経の「解剖学的走行」を熟知していること

神経が体のどこを通っているか、その地図が頭に入っていなければなりません。 「触診のセンスがあれば分かる」という人がいますが、私は今まで解剖学を知らずに神経の走行を正確にたどれるカイロプラクターを見たことがありません。

② その神経が「絞扼(こうやく)される箇所」を知っていること

神経はどこでも圧迫されるわけではありません。筋肉と骨の隙間など、絞めつけられやすい特定の「チョークポイント」が複数箇所あります。 これを知らずに闇雲に触っても、効果がないどころか、デリケートな神経を傷つけるリスクすらあります。

「理論は実践の基盤となる」 本学が、解剖学や生理学の講義に徹底的に時間を割く理由はここにあります。

「テニス肘が治らない」と悩む方へ。医学博士・米国DCの学長が、一般的な腱症(筋肉の問題)ではなく「橈骨神経の絞扼」に着目した症例を解説。AI時代に治療家が生き残るための「神経マニュピレーション」とは。

4. AI時代に生き残る「ブルーオーシャン」へ

多くの整体院は、「筋肉を揉む」「骨をボキボキする」というレッドオーシャン(競争過多の市場)で戦っています。これらは参入障壁が低く、将来的にはAIやロボットに代替される可能性もあります。

しかし、「医学的知識に基づき、繊細な神経の絞扼を指先で解放する技術」は、決してAIには真似できません。 そして、この技術を持っている治療家は日本にほとんどいません。つまり、完全に未開拓のブルーオーシャンなのです。

会社員で培った論理的思考が武器になる

これから治療家を目指す社会人の皆さん。 感覚だけの世界に飛び込むのが不安なら、ぜひ理論の世界へ来てください。

「なぜ治らないのか?」を論理的に分析し、解剖学という地図を持って治療にあたる。 その知的で高度なアプローチこそが、一生食いっぱぐれないあなたの「地力」になります。

本物の技術を学びたい方は、ぜひ徒手療法大学の門を叩いてください。


徒手療法大学の学長、榊原直樹

[執筆者プロフィール] 榊原 直樹(さかきばら なおき) 徒手療法大学 学長 / 医学博士(PhD) / 米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック(DC) 1998年に米国でDC取得後、LAにて10年間臨床に従事。帰国後、岐阜大学大学院医学系研究科にてスポーツ医学を専攻し、パワーリフターの動作解析等の研究に従事。現在は臨床家として現場に立ちながら、後進の育成に力を注ぐ。


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