【記事要旨】 筋トレ歴40年、瞑想歴25年、カイロプラクティック歴28年。長年継続を実践してきた徒手療法大学学長が、その秘訣を明かします。多くの人が挫折してしまう「三日坊主」の正体は、実は意志の弱さではなく「心の反応」にありました。本記事では、技術習得や日々の勉強が続かないと悩む方へ向けて、苦しさを感じずに淡々と継続するためのマインドセットと具体的な「心の客観視」の方法を解説します。
私の人生を振り返ると、今の自分を形成している「3つの核」があることに気づきます。
一つ目は筋トレ。19歳で大学に入学すると同時に開始し、40年が経過しました。紆余曲折ありましたが、現在も毎日欠かさず続けています。 二つ目は瞑想。これは25年間続いています。 そして三つ目がカイロプラクティック。この道に入って28年になります。
これだけを並べると、私はさぞかし意志が強く、継続力のある人間のように見えるかもしれません。しかし、実情は少し違います。三日坊主で終わってしまったことも数え切れないほどあるのです。 直近で言えばミャンマー語の勉強です。2年ほどは続きましたが、本学(徒手療法大学)の開学以来、徐々に遠ざかってしまい、今では現地へ行く直前に少し復習する程度になってしまいました。
なぜ、続くものと続かないものがあるのか。 なぜ、筋トレや瞑想、そしてカイロプラクティックの勉強や実践は何十年も苦もなく続けられているのか。
今回は、私なりの自己分析に基づいた、何かを学び続けるための「継続のメカニズム」についてお話ししたいと思います。
勉強が継続できない「三日坊主」の正体
カイロプラクティックの勉強に限らず、何かを継続できないとき、単純に「興味を失った」という場合もありますが、多くの原因は別のところにあります。それは、アクションを起こす直前に湧き上がる不快な感情です。
「面倒だな」「億劫だな」「今日は怠けたい」「楽をしたい」……。 こうしたネガティブな感情に心が占拠されてしまうと、教科書を開いたり、練習を始めたりするための心理的ハードルが一気に高くなります。その結果、そのハードルを越えられず、アクションを起こせないまま終わってしまうのです。これは、外界の刺激に対する「心の反応」に他なりません。
苦しいことを、苦しいまま継続するのは不可能です。心が「不快だ」と叫んでいる状態で無理やり続けるのは、人間の防衛本能として長続きしないようにできているのです。

「心の反応」を客観視することが継続の鍵
では、なぜ私は筋トレや瞑想を何十年も続けられているのか。 それは、アクションを起こす際、この不快な心の反応がほとんどないか、あっても極めて小さいからです。だから、苦を感じることなく、自然に体が動くのです。
これは、長年続けている瞑想(ヴィパッサナー瞑想)のたまものだと感じています。瞑想とは、心の反応(感情)の生成と消滅をひたすら観察する訓練です。 長年続けていると、たとえ「今日はやりたくないな」という不快な反応が心に生じたとしても、それを「あ、今、不快な反応が出ているな」と客観視できるようになります。
心を客観視できればできるほど、その反応は小さくなり、勢いを失います。 不快な感情が小さくなれば、行動への心理的ハードルは下がります。結果として、淡々と継続することができるのです。 勉強を継続するのに必要なのは、強靭な意志力ではなく、心の反応を小さくしていく訓練なのです。
カイロプラクティックの勉強を継続するために
この話は、カイロプラクティックの勉強に励む学生や、技術研鑽を続ける臨床家の皆さんにもそのまま当てはまります。
カイロプラクティックの習得は、一朝一夕にはいきません。膨大な解剖学の知識、繊細な触診技術、アジャストメントの習得。壁にぶつかり、「難しい」「自分には向いていないのではないか」「勉強が辛い」という「不快な反応」が心に生まれる瞬間は必ずあります。
その時、その感情に飲み込まれてしまうと、手は止まり、成長は止まってしまいます。 しかし、そこで一歩引いて、「今、自分は難しさを感じて反応しているな」と自分の心を客観視できれば、その感情は威力を失います。そして再び、目の前のテキストや、患者さんの体に向き合うことができるようになります。
また、臨床の現場でも同じことが言えます。 難しい症例や、痛みを訴え続ける患者さんを前にした時、術者の心に「焦り」や「不安」、あるいは「苦手意識」といった反応が生まれることがあります。もし術者がその反応に支配されれば、正しい検査や的確なアジャストメントはできません。 常に自分の心を客観視し、反応を最小限に抑え、静寂な心(Quiet Mind)を保つこと。それができて初めて、患者さんの体の微細な情報を指先で感じ取ることができるのです。

技術を磨き、心を磨く
継続とは、苦行を耐え抜くことではありません。心の反応を手なずけ、苦を苦でなくしていくプロセスです。
これからカイロプラクターを目指す皆さんも、日々の勉強や練習の中で、自分の心がどう反応しているか、少しだけ意識を向けてみてください。 「面倒だ」という感情が湧いたら、それをただ観察し、小さくなって消えていくのを待つ。そして、淡々と手を動かす。
その繰り返しの先に、数十年続く「本物のキャリア」が待っています。 技術(手)を磨くことと同時に、心(反応)を整えること。これもまた、一流のカイロプラクターになるための大切な修行なのです。
筆者プロフィール

榊原 直樹 (Naoki Sakakibara, D.C., Ph.D.) 徒手療法大学 学長 / 米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック / スポーツ医学博士
1998年、米国カリフォルニア州にてドクター・オブ・カイロプラクティック(D.C.)ライセンスを取得し、ロサンゼルスで10年間臨床に従事。2007年に帰国後、名古屋にて開院。2015年、岐阜大学医学部にて医学博士号(Ph.D.)を取得。 現在は、名古屋・神戸・札幌に拠点を置く「徒手療法大学」の学長として、後進の育成に力を注いでいる。筋トレ歴40年、ヴィパッサナー瞑想歴25年の実践家でもある。
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