【本記事のハイライト】
人生の優先順位: 徒手療法大学学長が定める自分軸は「1位:健康、2位:仕事」。
プロの責務: 他人の健康を預かる治療家自身が不健康であってはならない。「医者の不養生」を排し、自らを整える理由。
実践習慣: 脳のパフォーマンスを維持する「10年以上の断酒」と、洞察力を研ぎ澄ます「毎日の瞑想(心の歯磨き)」について。
新しい年を迎え、皆さんは今年一年、どのような目標を立てられたでしょうか。 先日、人生の目標達成に関する興味深いメソッド(ライフセブンミッション)に触れる機会がありました。人生を「健康」「仕事」「家族」「資産」などの7つの要素に分け、優先順位をつけるというものです。
これを自分に当てはめてみたとき、私の中にある「治療家の心構え」として、優先順位は非常に明確でした。 第1位は「健康」。第2位は「仕事」です。
私の中での「仕事(カイロプラクティック)」は、いわゆる労働としての「Work」ではありません。それは「真剣な趣味」の延長であり、探求心が尽きることのないライフワークです。だからこそ、第2位に入っています。
しかし、その愛すべき仕事よりも上位に、不動の第1位として健康があります。今回は、私の考えるプロフェッショナルとしての在り方についてお話ししたいと思います。
「医者の不養生」は許されない
私が自身の健康を最優先にする理由は、単に長生きしたいからではありません。 「他人の健康に責任を持つ人間が、不健康であってはならない」という、プロフェッショナルとしての強い自戒があるからです。
私たちカイロプラクターは、痛みや不調に悩む患者さんの身体を預かり、手助けをするのが役割です。その張本人である施術者が、不摂生で体調を崩していたり、心が荒れていたりしては、患者さんを診る以前の問題です。
「自らの心身の健康管理ができていない人間に、他人の健康管理を手助けする資格はない」
私は常々そう考えています。施術者の乱れた呼吸や、指先から伝わる迷い、不健康な気のようなものは、言葉にしなくても患者さんに伝わってしまうものです。最高のパフォーマンスで治療にあたるためには、まず自分自身という器を整えておくことが、患者さんに対する最低限の礼儀であり、責務なのです。

脳のパフォーマンスと断酒の決断
かつては私もお酒を嗜んでいた時期がありました。しかし、ある時気づいたのです。飲酒した翌日は、明らかに脳のパフォーマンスが落ちていることに。
カイロプラクティックの臨床は、瞬時の判断力と鋭敏な感覚が要求されます。「昨夜のお酒が残っている」などという状態で、ベストな治療ができるはずがありません。 「これではカイロプラクターとしての責務を果たせていない」。そう痛感し、それ以来、一滴もお酒を口にしていません。もう10年以上前の話になります。これは我慢ではなく、「最高の仕事をするために、不要なものを捨てた」という感覚です。
「心の歯磨き」としての瞑想
身体だけでなく、心のコンディションを整えることも不可欠です。 私は朝晩の瞑想を日課にしています。20年以上続けているので苦もなく継続できており、例えるならば朝晩の歯磨きと同じ感覚です。
歯磨きを忘れると、なんとなく口の中が気持ち悪いですよね。私にとって瞑想をしない状態は、それとほぼ同じ感覚になります。歯磨きが歯の掃除なら、瞑想は心の掃除のようなものです。日々生活していると、心にはどうしてもノイズやゴミがたまっていきます。瞑想には、それらをきれいに拭き取る効果があるのです。
瞑想を終えた後は、視界が開けたようにすっきりします。そのクリアな状態で患者さんと向き合うと、明らかに洞察力が働きます。余計なノイズがない分、脳のパフォーマンスが上がり、患者さんの状態が手にとるように分かるのです。
逆に言えば、心にゴミがたまっている状態では、そのような良い仕事は望めません。だからこそ、毎日欠かさず心を磨くのです。
学生たちへ伝えたい「治療家の心構え」
講義の中で、学生たちにもこうした話をすることがあります。 耳が痛いと感じる学生もいるかもしれません。しかし、今は全てを理解できなくても良いと思っています。
いつか皆さんが臨床の現場に出て、壁にぶつかった時、あるいは年齢を重ねて体力の変化を感じた時に、「そういえば学長がそんなことを言っていたな」と思い出してくれれば十分です。
心身を整えることは、良い治療家になるためだけの条件ではありません。それは、一度きりの人生をより豊かに、鮮やかに生きるための土台でもあります。
知識として知っているだけでなく、行動に移してこそ意味があります。「知行合一」。 2026年も、私自身がその治療家の心構えを体現する存在でありたいと願っています。

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この記事を書いた人

榊原 直樹(Naoki Sakakibara, D.C., Ph.D.) 徒手療法大学 学長 / 米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック / 医学博士
東北大学卒業後、渡米。1998年に米国にてドクター・オブ・カイロプラクティック(D.C.)のライセンスを取得し、ロサンゼルスで10年間臨床に従事。2007年に帰国後、岐阜大学医学部にてスポーツ医学の医学博士号を取得。 現在は名古屋・神戸・札幌にキャンパスを持つ「徒手療法大学」の学長として後進の育成に尽力する傍ら、名古屋駅前の治療院で現役の臨床家としても活動中。 座右の銘は「知行合一」。元ボディビルダーであり、毎朝1時間の筋トレと20年以上続くヴィパッサナー瞑想が日課。ミャンマーでの医療ボランティア活動もライフワークとしている。