こんにちは、徒手療法大学 学長の榊原直樹です。
本日は、徒手療法大学・神戸校で行われた実技講習の様子をレポートします。 今回の講師は、神戸校校長の徳山先生。テーマは、上肢の痺れや痛みを解消するために不可欠な技術、「神経マニピュレーション」(特に正中神経と尺骨神経)についてです。
「たった2本の神経について学ぶのに、そんなに時間がかかるの?」
これから勉強を始める方はそう思うかもしれません。しかし、今回の講習ではたっぷり5時間を使って、この2つの神経を理論と実技の両面からみっちりと掘り下げました。なぜなら、臨床の現場では教科書通りの知識だけでは対応できないケースが多々あるからです。
1. 「点」ではなく「線」で診る重要性
例えば、手のひらが痺れる手根管症候群。一般的には手首(手根管)での神経圧迫が原因とされます。しかし、神経は首から指先まで長く繋がっています。
講義では、手首だけでなく、その手前で絞扼(こうやく:神経が締め付けられること)されやすいポイントを一つひとつ確認しました。 同様に、肘の内側が痛む「内側上顆炎(ゴルフ肘)」も、単なる屈筋腱の拘縮・変性ではなく、実は尺骨神経が肘部分で絞扼されて起きているケースがあります。
このように、症状が出ている場所(点)だけでなく、神経の走行(線)全体を診て、どこでトラブルが起きているのかを探し出す。これが神経マニピュレーションの醍醐味であり、プロフェッショナルに必要なスキルです。
2. 解剖学は、治療家のための地図である
徒手療法大学の講義がなぜ面白いのか。それは、徹底的に細部までこだわるからです。 今回の講義資料(腕神経叢の講義スライド)の一部を少しだけ紹介しましょう。私たちは普段、以下のようなレベルで解剖学と臨床を結びつけています。
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胸の痛みとベンチプレス: 胸の筋肉を支配する「外側胸筋神経」や「内側胸筋神経」がどこを通るか知っていますか?例えば、ベンチプレスなどの高負荷トレーニングをする人で、大胸筋の筋力低下や痛みがある場合、単なる筋肉痛ではなく、鎖骨の下や小胸筋周辺での神経絞扼が原因のことがあります。
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脇の下や腕の内側の痛み: 「肋間上腕神経」という神経をご存知でしょうか。肋骨の間から出て脇の下へ走るこの神経が、不良姿勢や外傷によって絞扼されると、脇の下や腕の内側にしつこい痛みや知覚異常を引き起こします。これをただの肩こりや五十肩として片付けてはいけません。
神経マニピュレーションを行う上で最も大切なこと、それは神経の走行を熟知していることです。
徒手療法大学では、講義動画で詳細な神経解剖学を徹底して学ぶため、生徒たちにとってはもはや常識と言えるレベルですが、実際の治療現場ではこの知識がないと手も足も出ません。つまり、頭の中にある解剖学的な知識を頼りに、見えない神経の絞扼箇所を触診していくのです。
解剖学は、言わば地図のようなものです。 地図を持たずに見知らぬ土地を歩き出せば、自分が今どこにいるのか、どこを触っているのか、まったくわからなくなってしまいますよね?正確な地図(解剖学的知識)が頭に入っているからこそ、迷うことなくターゲットを捉え、治療へと繋げることができるのです。
そして、徒手療法大学の強みは「理論と実践の徹底した融合」です。 どんなに解剖学に詳しくても、それを実践に応用できなければ、カイロプラクターにとって何の意味もありません。私たちカイロプラクターは治療家であって、解剖学者ではないのです。

3. 「なんとなく」を排除する神経マニピュレーションの技術
正確な地図を持ち、治療家としての目的意識を持ったら、次に行うのが神経マニピュレーションの実技です。 ここで重要なのが神経の走行とテンションをかける方向です。
ただ闇雲に押したり揉んだりするわけではありません。 「神経がどの筋肉の間を、どの角度で抜けているか」を正確にイメージし、
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「遠位方向へ引くのか」
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「肩を外転させてテンションをかけるのか」 といった、ミリ単位の方向性とタッチを学びます。
徳山先生から紹介された過去のケーススタディ(実際の症例)を聞いている時の、生徒の皆さんの興味津々な眼差しが印象的でした。 「今まで治せなかったあの痛みは、ここが原因だったのか!」という気づきが、教室のあちこちで生まれていました。
未来の治療家の皆さんへ
人の体は複雑です。しかし、正しい「地図(解剖学)」と、それを読み解く「技術(徒手療法)」があれば、原因不明と言われる痛みにも光を当てることができます。
徒手療法大学では、明日からの臨床が変わる、実践的な学びを提供しています。 「もっと患者さんを良くしたい」「人体の不思議をもっと深く知りたい」。そんな情熱を持った皆さんと、教室でお会いできるのを楽しみにしています。

徳山 純治(とくやま じゅんじ)
現在の役職
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徒手療法大学 神戸校 校長
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徒手療法大学 講師
経歴・バックグラウンド
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関西の大学を卒業後、2007年に電気関係の会社に入社。名古屋支社勤務時代に治療家への転身を決意し、2013年に脱サラ。
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学生時代から野球、社会人になってからは筋トレや総合格闘技に取り組むスポーツマン。
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総合格闘技の試合での大怪我(右膝の外側側副靭帯と総腓骨神経の完全断裂)を機に、榊原直樹先生(徒手療法大学 学長)の治療を受け回復。その経験が治療家を目指す大きなきっかけとなる。
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怪我の克服後、ボクシングに転向しプロライセンスを取得。
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現在は神戸校の校長として、後進の育成に情熱を注いでいる。
この記事の執筆者

榊原 直樹(Naoki Sakakibara, D.C., Ph.D.)
徒手療法大学(College of Manual Therapy)学長 米国政府公認ドクター・オブ・カイロプラクティック(カリフォルニア州ライセンス)。 1998年に米国で資格取得後、ロサンゼルスにて10年間の臨床に従事。2007年に帰国し、2009年に名古屋駅前にて治療院を開院。臨床の傍ら、岐阜大学医学部大学院にてスポーツ医学の医学博士号を取得(2015年)。 「治療家は解剖学者ではない、実践者であれ」を信念に、解剖学的な裏付けのある「治せる技術」の普及と後進の育成に力を注ぐ。 元ボディビルダーであり、2000年から欠かさず続けている毎朝の筋トレとヴィパッサナー瞑想が日課。
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