ミャンマー徒手療法ボランティア活動報告 〜「武器」と「直感」を手に入れた旅〜

この記事の要約

2026年2月、ミャンマーの孤児院と現地の方々へ「徒手療法ボランティア」を行いました。

レントゲンもMRIもなく、言葉すら通じない過酷な環境。そこで卒業生・大門先生が実感したのは、1年半かけて磨いた「武器(解剖学的アプローチ)」と、問診ができないからこそ開花した「直感(非言語的診断)」の重要性でした。

AI時代にこそ求められる、アナログな「手当て」の原点と、世界で通用する治療家の条件について綴ります。

2月上旬、私は教え子と共にミャンマーへ渡りました。 今回の訪問の目的は、孤児院への支援と、現地の方々への徒手療法によるボランティア活動です。

政情不安や経済的な困難の中にある現地では、日本のような恵まれた医療環境はありません。レントゲンもMRIもない。そんな「裸一貫」に近い環境で試されるのは、私たち施術家の「診断力」と「対応力」です。

ミャンマーのボランティア現場で試される「武器」

今回同行した大門君の言葉に、私はこのボランティア活動のもう一つの意義——「教育の成果」を強く感じました。 彼は前回のミャンマー訪問(2024年11月)から約1年半を経て、再びこの地を踏みました。

施術を終えた後、彼は自身の成長についてこう語ってくれました。

「前回との違いは、この1年半でいろいろな『武器』を手に入れたことです。 武器というのは筋肉、神経、関節の問題への具体的なアプローチ法、治療法のこと。そして今回、それらを適材適所で活用することができるようになりました」

この言葉は、私たち徒手療法家にとっての「科学(サイエンス)」の部分です。 ただ闇雲に触れるのではなく、解剖学や生理学に基づいた「武器」を持ち、それを適材適所で使い分ける。その論理的な思考回路が、彼の自信を支えていました。

言葉の壁がある徒手療法で磨かれた「直感」

しかし、ミャンマーの臨床現場には、日本とは決定的に異なるハードルがあります。それは「言葉の壁」です。 通常、私たちの診断において、患者さんから話を聞く「問診」は非常に重要です。

大門君はこうも続けていました。

「問診は診断の80%を占めると言われていますが、ミャンマーでは言葉の壁があり、問診が満足にできない状況でした。 しかし、言葉の壁があったからこそ、逆に直感を働かせなければならない場面が増えました。お陰で直感力を養うことができました」

これこそが、臨床における「芸術(アート)」の部分です。 言葉が通じない分、患者さんの歩き方、表情の曇り、筋肉の緊張、皮膚の温度……そうした「非言語情報」を全身全霊で感じ取る。 理論で積み上げた「武器」と、現場で研ぎ澄まされた「直感」。この両輪が揃った時、施術家としてのレベルは一段階上がります。

学生の皆さんへ

今回のミャンマーでの経験は、彼にとってかけがえのない財産になったはずです。 「武器(知識・技術)」だけでも、「直感(センス)」だけでも、良い治療はできません。

教室で学ぶ医学的な知識は、君たちの確かな「武器」になります。 そして、その武器を持って現場に出た時初めて、言葉を超えた「直感」が磨かれます。

「診断なき治療」に陥ることなく、大門君のように自信を持って「自分の武器」を使いこなし、同時に患者さんの心身を深く感じ取れるカイロプラクターを、一人でも多く育てていきたい。 帰国した今、その思いを新たにしています。

榊原直樹

この記事を書いた人:榊原 直樹

徒手療法大学 学長 / 米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック (DC) / 医学博士 (PhD)

1998年に米国カリフォルニア州でDCライセンスを取得し、ロサンゼルスで10年間臨床に従事。帰国後、岐阜大学医学部にてスポーツ医学の医学博士号を取得。現在は名古屋駅前での臨床の傍ら、徒手療法大学(名古屋・神戸・札幌)の学長として後進の育成に尽力している。
2000年よりヴィパッサナー瞑想を実践し、毎日の瞑想を日課とする。心身両面からのアプローチを探求し続けている。

名古屋・神戸・札幌のカイロプラクティックスクール|徒手療法大学ではカイロプラクティックを学びたいという将来のカイロプラクターを募集中です。

緑のスクラブを着た筋肉質の日本人男性(榊原学長)が、ミャンマーの現地の診療所で高齢男性に徒手療法を行っているボランティア活動の様子。背景には解剖図が貼られ、現地の女性や子供たちが笑顔で見守っている。
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