徒手療法大学 学長です。
カイロプラクターを目指す皆さん、日々の勉強は進んでいますか? 解剖学や生体力学といった医学知識のアップデート、そしてアジャストメントをはじめとする治療テクニックの修練(験算)。これらは我々にとって、息をするのと同じくらい当たり前に行うべき「義務」です。
しかし、今日はあえて言わせてもらいます。 「それだけでは、治せるカイロプラクターにはなれない」と。
私が臨床の現場で、そして教育の場で見続けてきた「治療の核心」について、稀代の発明家ニコラ・テスラの哲学を借りてお話ししたいと思います。
1. 「波」を整えること=「心」を整えること
先日、ニコラ・テスラの哲学に触れる機会がありました。彼はこう言っています。
「現実は遅れてやって来る。先に“望む波”を整えよ」
テスラは、世界は物質ではなく「振動(波)」でできており、現実を変えたければ、まず自分の内側の波を整えることが先決だと説きました。
これは、私が常々皆さんに伝えている「心を整えよ」という教えと全く同じことです。
我々カイロプラクターの最大の使命は、患者さんを健康に導くこと。 しかし、その施術者自身が不健康で、心が乱れていたらどうでしょうか? 患者さんに対して全く説得力を持たず、そこに「信頼関係(ラポール)」は生まれません。
治療効果というのは、手技そのものの物理的な力だけでなく、「患者さんとの信頼関係の強さ」がダイレクトに反映されるものです。 心身ともに健康であり、整った状態であること。これこそが、患者さんの体に触れる前に確立されていなければならない「最低条件」なのです。

2. 「雑音」は治療の目を曇らせる
テスラはまた、「焦りからの努力は逆効果である」とも警告しています。 彼は、焦りや不安、怒りといった感情を「雑音(ノイズ)」と呼び、それが未来を遠ざけると語りました。
これを臨床の場に置き換えてみましょう。 「早く治さなければ」「何か他のテクニックを使わなければ」といった焦りや、プライベートな悩みによる不安。これらはすべて、施術者の心にある「雑音」です。 雑音がある状態での治療は、どんなに素晴らしい知識や技術を持っていても、それを活かすことができません。なぜなら、雑音が直感や洞察力を遮断してしまうからです。
では、どうすればこの雑音を取り除くことができるのでしょうか。 明日から、次のことを実践してみてください。
実際に患者を診ている時、あるいは実技講習の練習で相手の背中を触っている時、自分の心の状態を観察してみてください。 その時、自分の中にどれくらいの雑音があるか、ただ観察してみてください。
雑音を消そうとする必要はまったくありません。ただ、「ああ、今自分は焦っているな」「雑念があるな」と、その時の心の状態に気づくだけでいいのです。
不思議なことに、心を整えるということは、無理やり静かにすることではありません。自分の状態に「気づく」だけで、雑音は自然と小さくなっていきます。 雑音が消えれば、静寂が訪れます。その静寂の中でこそ、集中力が増し、「ここを調整すべきだ」という治療への洞察が自然と湧き上がってくるのです。
3. 学生の皆さんへのメッセージ
勉強熱心な皆さんほど、知識を詰め込むことや、新しいテクニックを覚えることに必死になりがちです。もちろん、その努力は素晴らしい。 しかし、もしそこに「焦り」という雑音が混じっているなら、一度立ち止まってください。
患者さんを治すのは、教科書に書かれた文字ではありません。 その知識を運用する、あなた自身の「整った心と体」です。
毎朝、鏡を見てください。 あなたは、患者さんが「この先生なら任せたい」と思える顔をしていますか? 心に余計なノイズはありませんか?
技術を磨くのと同じくらいの熱量で、自分自身の心身を磨いてください。
「波(心)が整えば、現実(治療結果)は後からついてくる」
これは発明の世界だけでなく、カイロプラクティックの世界でも通用する真理です。 まずは自分自身を「健康の象徴」として整えること。そこから、本物の治療家への道が始まります。

【本記事の要点まとめ】
技術だけでは不十分: 解剖学やアジャストメント技術は義務だが、それだけでは「治せるカイロプラクター」にはなれない。
テスラの哲学「波を整える」: 現実は心(波)の状態が反映される。施術者自身が心身ともに健康であり、整っていることが、患者との信頼関係(ラポール)を築く絶対条件である。
「雑音(ノイズ)」を取り除く: 焦りや不安は治療に必要な直感や洞察を曇らせる。無理に消そうとせず、自分の心の状態を客観的に「観察(気づく)」することで、静寂と集中力が生まれる。
健康の象徴であれ: 教科書だけでなく、それを運用する自分自身を磨くこと。「波(心)」が整えば、治療結果という現実は後からついてくる。
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この記事の執筆者

榊原 直樹(Naoki Sakakibara, D.C., Ph.D.)
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徒手療法大学(College of Manual Therapy)学長
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スポーツ医学&カイロプラクティック研究所 院長
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米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック
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医学博士(スポーツ医学・岐阜大学医学部)
1998年に米国カリフォルニア州にてドクター・オブ・カイロプラクティック(D.C.)ライセンスを取得し、ロサンゼルスで10年間の臨床経験を積む。2007年の帰国後、岐阜大学医学部にて医学博士号を取得。 現在は名古屋にて臨床(通算28年)を続ける傍ら、徒手療法大学の学長として後進の育成に注力。「常に学び続ける」を信条とし、海外医学部での解剖実習やミャンマーでのボランティア診療を定期的に主催している。