【学長コラム】私の原点(21) アメリカのカイロプラクティック大学で絶望!白紙のノートと私を救ったメキシコ訛り

【この記事の要約】
アメリカのカイロプラクティック大学に入学して最初に立ちはだかったのは、専門的な「基礎医学」と「英語」の分厚い壁でした。教科書もなく、板書さえしない過酷な授業スタイルにノートは白紙のまま。絶望的な状況の中で私を救ってくれたのは、意外な理由から言葉が完璧に聞き取れた、メキシコ出身の解剖学の恩師でした。本場のD.C.プログラムの厳しいリアルと、異国の地での心温まるエピソードを振り返ります。

アメリカのカイロプラクティック大学で立ちはだかる「基礎医学」の壁

生理学、病理学、生化学、免疫学——アメリカのカイロプラクティック大学では、入学した学生はまずこれらの「基礎医学」から履修を開始します。私が進学したロサンゼルスのクリーブランド・カイロプラクティック・カレッジも、もちろん例外ではありませんでした。

日本の大学では理系だったため、科学系の基礎知識はある程度持っていました。しかし、これらの専門科目をいきなり「英語で」受講するのは、当時の私にとって至難の業でした。そもそも、講師の口から飛び出す単語は初めて耳にするものばかりです。スペルすらわからないため、ノートを取るどころの話ではありません。

教科書も板書もない?本場アメリカの過酷な授業スタイル

さらに日本の大学と違ったのは、「指定の教科書」が存在しないことでした。あるのは「推奨図書」のみで、授業がその本に沿って進むわけでもありません。

極めつけは、講師によっては板書すら一切せず、ひたすら口頭で説明し続けるスタイルだったことです。そんな科目が一気に20科目以上も押し寄せてくるのです。入学にはTOEFLで一定のスコアが求められますが、「たとえTOEFLのスコアがどれだけ高くても、この授業についていくのは到底無理だ」と痛感しました。

とにもかくにも、すでにスタートは切ってしまっています。何としてでも食らいついていくしかありません。私は、意味がわからなくても、講師の言葉で聞き取れた単語の音だけをノートに書き取ることから始めました。それでも、一つの講義が終わってノートが白紙のまま……ということも日常茶飯事でした。

なんとかしようと、図書館で推奨図書を探し出し、事前に読んでわからない単語をチェックする予習も試みました。しかし、これを20科目すべてで行うなど物理的に不可能であり、早々にあきらめました。というか、別の「ある作戦」へと方針を切り替えることになります(これについては、また別の機会にお話しします)。

絶望的な状況での救い:恩師ドクター・チャベスとの出会い

そんな絶望的な状況の中で、私にとって唯一の「救い」となった科目がありました。それが解剖学の授業です。

この解剖学の先生は、話した重要なポイントをすべて板書してくれ、板書しない部分も口頭で何度も丁寧に説明してくれました。そして何より、この先生の話している言葉を、私はほぼ完璧に聞き取ることができたのです。

なぜだか分かりますか?

実は、その先生はメキシコ出身だったからです。以前のブログでもお話ししましたが、私は無料の語学学校でメキシコ人の友人たちとよくコミュニケーションをとっていました。彼らと過ごす時間を通じて、私の耳は「メキシコ訛りの英語」にすっかり慣れ親しんでいたのです。

先生の名前はドクター・チャベス。メキシコでMD(医師免許)を取得した後に渡米し、さらにアメリカのカイロプラクティック大学で学んでD.C.(ドクター・オブ・カイロプラクティック)の学位も取得したという素晴らしい経歴の持ち主でした。

今でもよく覚えています。授業が終わった後も、私はドクター・チャベスのもとへ何度も質問に行きました。私の幼稚な質問に対しても、彼はいつも笑顔で迎え入れ、真摯に丁寧に答えてくれました。異国の地で必死に学んでいた当時の私にとって、それがどれほど心強かったか。今となっては、とても温かい思い出になっています。

現在、日本で未来のカイロプラクターを育成する立場になって振り返ると、あの過酷な基礎医学の土台があってこそ、今の臨床や教育活動があるのだと改めて実感しています。

榊原直樹

この記事を書いた人:榊原 直樹

徒手療法大学 学長 / 米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック (DC) / 医学博士 (PhD)

1998年に米国カリフォルニア州でDCライセンスを取得し、ロサンゼルスで10年間臨床に従事。帰国後、岐阜大学医学部にてスポーツ医学の医学博士号を取得。現在は名古屋駅前での臨床の傍ら、徒手療法大学(名古屋・神戸・札幌)の学長として後進の育成に尽力している。
2000年よりヴィパッサナー瞑想を実践し、毎日の瞑想を日課とする。心身両面からのアプローチを探求し続けている。

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アメリカ カイロプラクティック 大学の教室で、白紙に近いノートを前に解剖学の授業を受ける日本人学生と黒板で解説する恩師
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