本日は徒手療法大学・神戸校で開催された実技講習のレポートをお届けします。徳山先生(Dr. Tokuyama)の指導のもと、「腰神経叢の神経モビリゼーション」をテーマに、腸骨鼠径神経、陰部大腿神経、外側大腿皮神経、大腿神経および伏在神経の解剖学と具体的な手技を学びました。また、鼠径ヘルニア術後の違和感や、変形性膝関節症に隠れた神経絞扼といった臨床での実践的なケーススタディ、さらにレッドフラッグ(適用外症状)の鑑別まで、現場ですぐに活かせるリアルな内容をまとめています。
皆さま、こんにちは。徒手療法大学学長の榊原 直樹(D.C., Ph.D.)です。
本日は神戸校にて、毎月恒例の実技講習が行われました。神戸校での実技指導は、臨床経験豊富な徳山先生(Dr. Tokuyama)が担当しています。
今回の講習テーマは「神経モビリゼーション」から「腰神経叢」の前半部分です。腰神経叢は第12胸神経(Th12)から第4腰神経(L4)の前枝で構成されています。本日は、以下の主要な神経について、その解剖学的な概要とアプローチを深めました。
腰神経叢の主要な神経とその働き
- 腸骨鼠径神経(L1)
第1腰神経前枝からなる神経です。知覚は陰部や大腿上内側部を支配し、運動支配として腹横筋や内腹斜筋に関与します。 - 陰部大腿神経(L1-2)
第1および第2腰神経前枝からなり、陰部枝と大腿枝に分岐するのが特徴です。陰部や大腿近位前上部の知覚を支配するほか、男性では精巣挙筋の運動支配も担います。 - 外側大腿皮神経(L2-3)
第2および第3腰神経前枝から構成されます。運動支配は持たず、大腿前外側部の知覚のみを支配する皮神経です。 - 大腿神経(L1-4)
第1から第4腰神経前枝からなる、腰神経叢の中でも大きな神経です。大腿前部から下腿内側、足部内側までの広い範囲の知覚を支配し、大腿四頭筋や腸骨筋、縫工筋などの重要な筋群を運動支配します。
また、大腿神経の後枝から連なる伏在神経についても詳しく網羅しました。
神経モビリゼーションの実践テクニック
さらに本日の講習の核として、これらの神経に対する具体的な「神経モビリゼーション」の手技(テクニック)を徹底的に反復練習しました。
例えば、腸骨鼠径神経に対するアプローチでは、仰臥位で患側をベッドから出し、腹横筋や内腹斜筋の貫通部を触診し、筋膜孔を拡げるようなLine of Drive(LOD)で患側の股関節を伸展させる手技などを学びました。陰部大腿神経に対しては、仰臥位で大腰筋の貫通部位や尿管との交差部位を正確に触診し、神経と組織を離開する繊細なテクニックを実践しました。
また、外側大腿皮神経では側臥位にてASIS内側から下方へアプローチしつつ股関節を伸展・内転させる手法、大腿神経から伏在神経にかけては、腸腰筋リリースをはじめ、内転筋管や広筋内転筋膜に至る各絞扼ポイントへの治療アプローチを習得しました。

ケーススタディと臨床のリアル
講義では、徳山先生のリードのもと、単なる解剖学の基礎や手技の形にとどまらず、非常に実践的なケーススタディを用いたディスカッションが展開されました。
例えば、鼠径ヘルニア術後に見られる腹圧の低下や鼠径部周辺の違和感。これは腸骨鼠径神経の関与が疑われるケースです。また、寛骨のアウトフレア(IN変位)によって鼠径靭帯が伸張し、大腿外側部にシビレを引き起こすケースでは、外側大腿皮神経へのアプローチと併せて、寛骨IN変位への的確なアジャストメント(AKT)の重要性が解説されました。
さらに、臨床でよく遭遇する「膝関節痛」についても取り上げました。一般的に膝変形性関節症(OA)と診断されがちな症状の中に、実は伏在神経膝蓋下枝の絞扼が隠れているケースについての解説は、受講生にとっても大きな気づきになったはずです。
適用外症状(レッドフラッグ)の鑑別
一方で、カイロプラクターとして絶対に忘れてはならないのが、適用外症状(レッドフラッグ)の的確な鑑別です。徳山先生からは、鼠径ヘルニア(急性症状)の鑑別や手術後の徒手療法における注意点、大腿骨頭壊死、そして腎・泌尿器系疾患などの内臓疾患の可能性について、時間を割いて入念な指導がありました。
次回の講習では、引き続き「閉鎖神経」、そして「仙骨神経叢」「下肢の神経」へと進んでいきます。
徳山先生の熱意ある指導のもと、受講生の皆さんが確実に実力をつけていることを頼もしく思います。参加された神戸校の皆さま、本日はお疲れ様でした。次回も充実した学びにしていきましょう!