「MRIで異常なし」は、「頭痛の原因がない」という意味ではありません。MRIは脳腫瘍や出血、脳梗塞など、脳の構造の異常を調べる検査です。片頭痛や緊張型頭痛のように、構造に異常が出ない頭痛は多くあります。
一方で、突然の激しい頭痛や、麻痺・ろれつの異常を伴うときは、過去のMRIの結果にかかわらず、早めに再受診が必要です。この記事は診断の代わりにはなりません。考え方の整理と、受診の目安としてお使いください。
この記事でわかること
- すぐに受診すべき危険なサイン
- MRIで異常が出ない主な頭痛の種類と、その理由
- 頚性頭痛とは何か。徒手療法でわかっていること、わかっていないこと
- どの診療科を受診するか
執筆:徒手療法大学学長 榊原直樹(DC, DACBSP, PhD)。医学的な根拠は、記事末の参考文献に示しています。
すぐに受診すべき危険な頭痛のサイン
次のサインがあるときは、過去のMRIが「異常なし」でも、医療機関で再評価を受けてください。このリストは、二次性頭痛(他の病気が原因の頭痛)を見逃さないための警告サインをまとめたSNNOOP10リスト(Do et al., Neurology 2019)を、患者さん向けに言い換えて整理したものです。全項目の網羅ではありません。
救急受診を考えるサイン
- 突然始まり、数分以内に最も強くなる激しい頭痛
- 麻痺、しびれ、ろれつが回らない、物が二重に見える、視野が欠ける、けいれん、意識がもうろうとする
- 発熱と首の硬さ(前かがみになれない)を伴う頭痛
- 頭を打った後に始まった、または悪化した頭痛
早めに(数日以内に)受診するサイン
- 高齢になって初めて起きた頭痛、またはこれまでと明らかに違う頭痛
- 数週間から数か月で、少しずつ悪化している頭痛
- 咳、くしゃみ、いきみ、運動で誘発される頭痛
- 横になる、立つなど、姿勢で大きく変わる頭痛
- がんや免疫が低下する病気の既往がある、または妊娠中・産後である
- 目の強い痛みに、充血や涙を伴う頭痛
- 市販の鎮痛薬を月に10日以上使っている(薬剤使用過多頭痛の可能性があります)
MRIで異常が出ない頭痛の種類と理由
頭痛の多くは、脳の構造に異常がない「一次性頭痛」です。このため、MRIで異常が出ないことは、むしろ一般的です。
研究データもこれを示しています。米国のU.S. Headache Consortiumガイドライン(AAFP要約)は、片頭痛で神経学的診察が正常な場合、画像検査は通常必要ないとしています(Grade B)。該当する研究では、重大な頭蓋内異常の割合は約0.2%でした。Sempereら(2005)は、非急性頭痛1,876例のうち重大な頭蓋内病変は1.2%、神経学的診察が正常な例では0.9%でした。ただしこの著者らは、問診と診察だけで重大な病変を完全には除外できないとも結論しています。「異常なし」は安心材料ですが、サインが出たときに再評価する前提が必要です。
| 頭痛の種類 | 特徴 | MRIで異常が出にくい理由 | 相談先の目安 |
|---|---|---|---|
| 片頭痛 | 拍動性、片側に多い。吐き気、光や音に過敏。発作は4~72時間続く | 脳の機能の変化が関わり、形の異常として写らない | 脳神経内科、頭痛外来 |
| 緊張型頭痛 | 両側の締め付ける痛み。軽~中程度で、動いても悪化しにくい | 画像に写る構造的な変化を伴わない | 脳神経内科、頭痛外来、かかりつけ医 |
| 群発頭痛 | 目の奥の激痛。約15~180分。涙・充血・鼻水を伴う | 発作時の神経・自律神経の活動で、構造の異常を伴わない | 脳神経内科、頭痛外来 |
| 薬剤使用過多頭痛 | 鎮痛薬を頻繁に使うことで、頭痛が慢性化する | 薬の使い方が原因で、構造の異常を伴わない | 使用をやめずに、医師に相談 |
| 頚性頭痛 | 首の動きや圧で誘発される、片側に固定した頭痛 | 画像所見だけでは原因の証明にならない(ICHD-3) | 首の診察ができる医師、頭痛外来 |
分類はICHD-3(国際頭痛分類第3版)に従います。表の「相談先の目安」は一般的な目安です。徒手療法は、医師の評価で危険なサインがないと確認された後の選択肢として、次の節で扱います。受診先は、症状や地域の医療体制によって変わります。
頚性頭痛と徒手療法でわかっていること
頚性頭痛に対する頸椎の徒手療法は、「有益かもしれない」という段階の根拠です。確立した治療法とはいえません。
頚性頭痛の定義
ICHD-3(11.2.1)は、頚性頭痛を次のように定義しています。
- 頸椎または首の軟部組織に、頭痛を起こしうる障害や病変がある(臨床所見または画像所見)
- 因果関係の証拠が、次の4項目のうち2つ以上で示される
- 頭痛が、頸部の障害や病変の発生と時間的に関連して始まった
- 頸部の障害や病変の改善と並行して、頭痛も大きく改善または消失した
- 頸の可動域が低下し、誘発する動作で頭痛が大きく悪化する
- 頸部の構造やその神経支配への診断的ブロックで、頭痛が消える
- 他のICHD-3の診断では説明できない
画像所見だけでは、因果関係の証明になりません。片頭痛や緊張型頭痛との見分けには、片側に固定した痛み、首を押す・動かすと誘発されること、痛みが後ろから前に広がることが手がかりになります。
徒手療法のエビデンス
系統的レビュー2件で、結論は似ています。有益な可能性を示す一方、試験の質と数が限られ、確定的な結論は出していません。
| レビュー | 対象 | 結果 | 著者らが挙げた限界 |
|---|---|---|---|
| Garcia et al., Front Neurol 2016 | RCT 10件 | 10件中7件で、頸椎のモビライゼーション・マニピュレーションが統計学的に有意な改善。「有益かもしれない」 | 試験間の違いが大きく、臨床的な意味づけが難しい。強い根拠にはさらなる研究が必要 |
| Chaibi & Russell, J Headache Pain 2012 | RCT 7件 | 理学療法と脊椎マニピュレーションは有効かもしれない | 未治療対照群を置いた試験は1件。介入期間が推奨の3か月未満。診断の妥当性が確立していない |
この節の結論は、次の3点です。
- 頭痛の医学的な評価を先に受け、危険なサインがないことを確かめる
- 首の動きや圧で誘発されるという特徴があれば、頚性頭痛の可能性がある
- 徒手療法を受ける場合は、目的と期間、効果の判定方法を事前に確認する
頸椎への手技の安全性については、上部頸椎調整のリスクをあわせてご覧ください。
よくある質問
MRIで異常なしなら、頭痛は心配ないですか?
「異常なし」は、脳に腫瘍や出血などの構造の異常が見つからなかったという意味です。頭痛の原因がないという意味ではありません。危険なサインが出たときは、再評価を受けてください。
毎日頭痛が続くのに、検査で異常なしと言われました。何科に行けばいいですか?
脳神経内科か、頭痛外来が目安です。最初はかかりつけ医でもかまいません。頭痛があった日、強さ、鎮痛薬を飲んだ日を記録した「頭痛日記」を持参すると、診断の助けになります。
偏頭痛(片頭痛)でも、MRIは異常なしになりますか?
はい。片頭痛はMRIに異常が出ない代表的な頭痛です。診断は、発作の特徴(拍動性、吐き気、光や音への過敏、持続時間)をもとに行います。
MRI異常なしの頭痛が治らないのは、なぜですか?
考えられる理由は、主に2つです。一つは、頭痛の種類まで診断が絞れていないことです。もう一つは、鎮痛薬の使い過ぎで頭痛が続くこと(薬剤使用過多頭痛)です。診断名を確認し、鎮痛薬を使った日数を医師に伝えてください。
群発頭痛も、MRIでは異常が出ませんか?
群発頭痛は一次性頭痛の一つで、構造の異常を伴わないことが多い頭痛です。ただし、他の病気を除く目的でMRIを行うことがあります。目の奥の激痛と、涙や充血を伴う場合は、頭痛外来で相談してください。
頚性頭痛はカイロプラクティックで治りますか?
「治る」と断言できる根拠はありません。系統的レビューでは、有益な可能性が示されている段階です。医師の評価で危険なサインがないと確認してから、施術の目的、期間、効果の判定方法を確認して受けてください。
MRIを撮り直したほうがいいですか?
撮り直すかどうかは、症状の変化や診察所見で医師が判断します。頭痛の性質が変わったときや、危険なサインが出たときは、早めに相談してください。
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徒手療法大学では、こうした文献の読み方と臨床推論を学べます。学校案内はこちら。
執筆者
榊原直樹(DC, DACBSP, PhD)。徒手療法大学 学長。1998年にカリフォルニア州のDC免許を取得し、ロサンゼルスで約10年間臨床に従事。2007年に帰国後、2009年に名古屋駅近くで開院。2015年に岐阜大学で博士(スポーツ医学)の学位を取得。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりにはなりません。頭痛の原因や適切な対応は、人によって異なります。気になる症状がある場合は、医療機関に相談してください。
参考文献
- Do TP, et al. Red and orange flags for secondary headaches in clinical practice: SNNOOP10 list. Neurology. 2019;92(3):134-144.
- Sempere AP, et al. Neuroimaging in the evaluation of patients with non-acute headache. Cephalalgia. 2005;25(1):30-35.
- Evidence-Based Guidelines for Neuroimaging in Patients with Nonacute Headache(U.S. Headache Consortiumガイドラインの要約). Am Fam Physician. 2005.
- Headache Classification Committee of the International Headache Society. The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition. Cephalalgia. 2018;38(1):1-211. 11.2.1 Cervicogenic headache
- Garcia JD, et al. Mobilization and Manipulation of the Cervical Spine in Patients with Cervicogenic Headache: Any Scientific Evidence? Front Neurol. 2016;7:40.
- Chaibi A, Russell MB. Manual therapies for cervicogenic headache: a systematic review. J Headache Pain. 2012;13(5):351-359.

この記事を書いた人:榊原 直樹
徒手療法大学 学長 / 米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック (DC) / 医学博士 (PhD)
1998年に米国カリフォルニア州でDCライセンスを取得し、ロサンゼルスで10年間臨床に従事。帰国後、岐阜大学医学部にてスポーツ医学の医学博士号を取得。現在は名古屋駅前での臨床の傍ら、徒手療法大学(名古屋・神戸・札幌)の学長として後進の育成に尽力している。
2000年よりヴィパッサナー瞑想を実践し、毎日の瞑想を日課とする。心身両面からのアプローチを探求し続けている。